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プロレスベルトと芥川賞の価値・権威 その3 反権威主義の限界

 ピース又吉は「先生」扱いされることに「困惑」していると伝えられる。

 世間的な「格」が上がったので、お笑い番組に出づらくなったとも言われる。


(引用開始)*******************************


 若手芸人の世界を描いた小説「火花」で、ピースの又吉直樹が芥川賞を受賞したニュースは、世間とマスコミを席巻。お笑い芸人初となる快挙に芸能界も騒然となった。

 受賞決定後、出版元の文藝春秋が数十万部の増刷を繰り返し発表するなど、又吉フィーバーといっていい盛り上がりぶりなのである。

 一躍、人気作家となった又吉だが、快挙達成の裏で、本業のお笑いに関する心配事が関係者の間で囁かれているという。

「これまで出ていた番組に出づらくなるのは間違いないと思います」と言って、ベテランの構成作家が続ける。

「今回の受賞で特に出演しにくくなったのは、大喜利の腕を競う『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)。又吉は同番組の過去13大会中5回も出ている常連ですが、さすがに芥川賞作家を簡単には出せません

 その理由については、

「あの番組は、今のお笑い界で最高の権威である松本人志が『大会チェアマン』となり、参加者より一段上の立場という構成になっている。そこにお笑い界とは別の権威『芥川賞作家』となった又吉が参加者として出たら、松本の立場が揺らいでしまうんです。いわば又吉は『扱いにくい人』になった。当然、松本は『大丈夫』と言うでしょうが、果たして(2人が所属する)吉本興業がゴーサインを出すかどうか‥‥」

 副業で芥川賞作家となったピース又吉。芸人としての今後にも注目したい。(白川健一)

(アサ芸プラス 2015年7月29日記事)


(引用終わり)*******************************


 芥川賞を取ったら格が上がる。「先生」と呼ばれるべき存在となる。

 お笑い界の最高権威を揺るがす権威に成り上がる。

(「お笑い界の最高権威」というのもどこか不思議な言い方だが。)


 たぶん今後、松本人志や他の誰でもピース又吉をイジる場面が放送されれば、

「何をコイツごときが芥川賞作家を」というような書き込みがネットに上がることになろう。


 ツイッターでもそうつぶやかれ、そんなことはしない大勢の人たちも、同じように感じはするのだろう。 


 しかし、それはなぜなのか。

 こういう感じ方は、まるきり「権威主義」に見える。

 芥川賞は権威であり箔であり、それを取った者は尊重しなければならない――そうしなければけしからん、というわけである。

 
 今の世の中のほぼ全員が、権威主義には反感を持っているはずだ。

 権威を尊び服従しなければならない――それが道徳で人の道、あるべき姿だなどと言えば、馬鹿にされるか叩かれまくるはずである。

 しかしそれでいながら、たとえば芥川賞などという権威は何の引っかかりもなく受け入れる。


 それを獲った人は「すごい」から「上」の存在とみなす。

 こういうことは、反権威主義の限界を示しているのだろうか?


 本記事「その2」で述べたように、人は他人と世間の影響を全く受けずには生きられない。純粋な独創独思はあり得ない。

 我々は地球が丸いこと、物質が原子でできており本当は机もスカスカなのだということ、人間の体の半分以上が水分だということを「知っている」。

 しかしそれは、自分で調べて確かめたからではない。

 他人が言うから、偉い学者が言うから、本に書いてあるから、世間がそうしているから、自分も受け入れているのである。

 またどんなに偉い学者たちも、他の学者の書いた本を読んで勉強してきたのである。

 もし本当に全ての権威を疑い信用しないとすれば、勉強することなどできない。

 誰だって本に書いてあることは、基本的には正しいものだと思って読む。


(だから本を書くことには、重い責任があるのだ。)


 それと同様――世間が、他人が、メディアが、こぞって「スゴい」とみなしていれば、やはりスゴいのだろうと自分も思う。

 みんながスゴいと言うから、自分もそう思うのが「正しい」ということになる。

(⇒ 2015年5月6日記事:スポーツに価値がある理由――「みんながそう思うから価値がある/正しい」)
   

 芥川賞の権威の受容というのは、まさにその典型例の一つなのだろう。

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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