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異常ツイート殺人事件と犯罪者データベースの構築 その1

 時事問題、ニュースについて語ることは、基本的には虚しい。
 どんな大事件もセンセーショナルな出来事も、1週間も経たないうちに過去の話題として忘れ去られる。
 次から次へとニュースは生まれては流れ、もはや「凶悪犯罪で名を残そう/轟かせよう」という名声欲系犯罪者にとっても、その願望成就は極めて難しいものになってしまった。
 1ヶ月前の事件について何か語っても、「え、まだそんなこと言ってんの?」と人は思う。そもそも見ても聞いてももらえない。人は最新ニュースに惹かれる。
 それを承知の上で、このたび起こった「異常ツイート殺人事件」を題材に、昔から思っていたことを述べる。

 2015年3月9日、兵庫県(淡路島)洲本市において住民5人が刺殺された。
 逮捕されたのは、被害者らの近所そして親族である無職・平野達彦40歳。
 実家で親と同居する引きこもりだったとされる。
 それはありふれたプロフィールだが、特徴的なのは彼のやっていたツイッターやフェイスブックの内容である。


20150312平野達彦ツイッター1


20150312平野達彦ツイッター2
 

 「別冊宝島」(宝島社)や「好奇心ブック」(双葉社)を読んできた人にはおなじみというか、教科書的と言っていいほど典型的な、電波人間の書く文章である。

 こういう人は全国的に分布しているが、ツイッターをやらない人は自宅にこんなのをベタベタ張り紙したりする。
 とにかく作家のように、自分の思いを人に広く知らせたくてたまらない衝動に駆られるのだろう。

 私が子どもの頃から思っていたのは、誰もが見れる「犯罪者データベース」「危険人物データベース」というものは存在しないのだろうかということである。
 もちろん警察がそれを持っているだろうことは想像できる。またそうだからといって、民間人にホイホイ渡しはしないだろうこともわかる。
 しかしそういうデータベースは、民間人でも誰でも(小中学生でも)作ろうと思えば作れるはずなのだ。

 具体的には、日々の新聞には必ず「誰々何歳がどこで何の容疑で逮捕された」との記事が載っている。それを抜き書きするだけで、自分の住んでいる地域の犯罪者データベースは簡単にできる。

 過去の新聞の縮刷版はあるのだから、それもさかのぼって抜き書きすればよい。
 今ならネットで検索し、パソコンに表にして打ち込めばよい。
 そういうものを欲しい人は大勢いるだろうから、本やデータ商品としても売れるしネットで無償提供もできる。
 これは誰でも考えつくことなのだが、では、なぜ、そういうものが見当たらないのか?

 「そんなの人権問題なんだから、できないのが当たり前だろう」との声がすぐ上がるのはわかる。
 しかしまず、抜き書きするのは違法でも何でもない。新聞やネットの犯罪記事をスクラップするのを止めさせるのは、事実として誰にもできない。
 そしてまた、そういうデータ集を有料でも無料でも提供・公開するのを禁止する根拠はどこにあるのか。(別に著作権侵害にも当たらないはずだ)

 そんなことをする人間はキモいと思われる、それが嫌だから誰もやらない、と言うのなら、エグいエロスを扱う業界が厳然と存在し新規参入者が絶えることもないことはどう説明するのだろう。
 そんなことをすれば犯罪者の更生を妨げる、永遠に悪名が残り続ける、同姓同名の人がいわれのない迷惑を被る……なるほどそれはそうである。特に同姓同名者の問題は一番深刻かもしれない。
 

 しかしそれらの問題は、今だって充分に問題なのだ。
 犯罪者の名は今でもネット上に半永久的に残る。(検索する人もいないし、話題にもならないかもしれないが)
 その根源は、そもそも報道機関が逮捕者を実名で報道することにある。

 だからこそ、実名報道することに反対する人たちが現実にいるのである。

 だがこれは、最もリベラルを自認するメディア/言論人でさえ容易に同調しない主張だろう。
 犯罪者や逮捕者を実名で伝えない――それは理念的にも営業的にもジャーナリズムの自殺だからである。
 誰だって「何々の容疑で容疑者Xが逮捕された」などという記事より、実名記載の記事を読むし買う。
 どんな事件でも「容疑者X」としか書いていないような新聞を、誰もジャーナリズムの一員とは認めない。
 しかし本当に人権を守り同姓同名冤罪を防止しようとするなら、そうするしかないのである。
 そうしなければ、誰でも犯罪者データベースを作れる環境を(そんなことに反対するであろう)メディア自身が作り支えていることになる。

 極めて野次馬的な書き方になるが、私は誰か金持ちの個人・企業が、こうした抜き書き式犯罪者データベースの構築に乗り出したらどうなるかと想像する。
 それは社会的に非常に興味深い展開を招くはずである。

 いわゆる人権派に属する人たちは、そんなものに絶対に反対する。
 かつて『部落地名総鑑』という本があった。日本全国の被差別部落の地名をリストアップした本である。
 もちろんそれは絶版になった。再版・新装版が出る気配もない。
 しかしそれは、出版元が意図的に調査・編集した本である。
 犯罪報道から抜き書きしただけのデータを売ってはならない、無料で公開してもならない、とする法的根拠はどうやって形作るのだろう。

 そのデータの元となる実名報道をリベラル派報道機関が止めることは、絶対にないと言っていい。
 彼らはどうやってデータベースの構築と頒布を阻止できるのか、かなり興味津々である。

 そしてまた、こういうデータベース作りは何も金がなくてはできないことでもない。
 各新聞の地域版に一人ずつ抜き書きする人がいればそれでよく、彼らが連携しさえすればそれが全国版データベースになる。
 これはある意味、個々人によるマスコミや公的雰囲気への挑戦と言えるだろう。一般市民が自衛のため立ち上がったとも言えるだろう。
 国や社会の現体制が自分たちを(外敵その他の脅威から)守ってくれないなら、自分たち自身で守る。
 これは歴史上何度も何度も現れてきた人民の意識でありパターンであり、リベラル派のみならずほとんどの人がやむを得ないと――あるいは積極的に礼賛さえする姿勢のはずだ。
 人権派・リベラル派は、それとどう折り合いを付けるのか?

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プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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