6月1日、NOAHは岡田欣也(30歳)と矢野安崇(26歳)を、両者合意の上で選手契約解除したと突如発表した。
理由は、何も語られていない。
(⇒ 日刊スポーツ 2023年6月1日記事:【ノア】岡田欣也と矢野安崇、両選手合意のもと選手契約を解除) この両選手、NOAHの「期待の若手」だった。
いや、期待の若手と呼ばれない若手というのはいないものだが――
そうであってもこの2人は、大袈裟に言えば……
かつて存亡の危機に直面したNOAHが、ようやく若手も多く入ってきて復興の道が見えてきたということについての、象徴のような存在ではなかったろうか。
(言い過ぎだろうか?)
それがこうやって、何の説明もなしの突然の「解雇」である。
確かに解雇とは書かれていないが、限りなくそれに近いニュアンスを感じないではいられない。
これにはきっと良からぬ事情があったのだろうし、
よりによってプロレス界にとって10年以上ぶりのオールスター戦「ALL TOGETHER」が開催される直前というタイミングでさえあるのだから、よっぽどの事情なのではないか。 それはまぁ確かに、選手を解雇するたびに団体・企業には詳しい説明責任が生じる、という決まりはないだろう。
プロレス団体なら、なおさらかもしれない。
そして確かにこんなことは、プロレスファンならずとも世間の人たちはすぐに忘れるものでもある。
そうは言っても――特にNOAHの場合は昔から際立って――、近年のプロレス団体は、選手の解雇・処分の理由を全く言わなすぎるのではないかと思わぬではない。
これでは岡田欣也・矢野安崇の両選手がこのまま引退するのかどうかも、一切手掛かりがないままである。
もちろん両選手が他の団体またはフリーで復帰するというのなら、いつの日か今回の契約解除の真相が、本人の口から語られる日も来るだろうが……
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5月31日、6月9日に両国国技館で開催される「ALL TOGETHER AGAIN 元気があれば何でもできる!」のカードがほぼ全て発表された。
あとは新日本で直前に行われる「SANADA vs 辻陽太」のIWGP世界ヘビー級の結果待ちというところだろうか。
なお、「ALL TOGETHER」オールスター戦は第3回目であるので、私個人は「ALL TOGETHER 3」と心の中で呼んでいる。
(⇒ 日刊スポーツ 2023年5月31日記事:国内メジャー3団体による「ALL TOGETHER AGAIN」対戦カードを発表) 重複を厭わず、対戦カードを挙げてみると……
●AMAKUSA、青柳亮生、高橋ヒロム VS HAYATA、ライジングHAYATO、マスター・ワト
●フランシスコ・アキラ、TJP、アーロン・ヘナーレ、グレート-O-カーン、ジェフ・コブ VS 田村男児、佐藤光留、本田竜輝、斉藤レイ、斉藤ジュン
●成田蓮、エル・デスペラード、鈴木みのる VS 宮脇純太、杉浦貴、丸藤正道
●大森北斗、石川修司 VS 中嶋勝彦、潮崎豪
●海野翔太 VS ヨシ・タツ
●藤田晃生、ザック・セイバーJr. VS ショーン・レガシー、クリス・リッジウェイ
●清宮海斗、宮原健斗、棚橋弘至 VS 拳王、青柳優馬、オカダ・カズチカ
●BUSHI、鷹木信悟、内藤哲也 VS 安斉勇馬、諏訪魔、永田裕志
●YOSHI-HASHI、後藤洋央紀、石井智宏 VS 稲村愛輝、稲葉大樹、マサ北宮 私はこれらのカード群、かなりいいものが揃っているのではないかと思う。
もちろんオールスター戦のカードとなれば「文句百出」になるのはわかりきった話で、プロレスファンの一人一人が何らかの思いを――「ああすれば面白くなるのに」という思いを――持つのが当たり前ではある。
しかし全体的に、楽しみな顔合わせが多く揃っているのではなかろうか。
中でも目立ちまくるのは唯一のシングルマッチである海野翔太とヨシタツ戦で、ただこれだけでも海野翔太がいかに「新日本の星」であるかがわかるというものだ。
その相手がヨシタツだというのも(絶妙とまでは言わないが)なかなかのチョイスで――
ヨシタツが勝つのか負けるのかちょっと読めない、そういうヨシタツのプロレス界での位置づけまでが伝わってくるようではないか。
また、グレート-O-カーンと斎藤兄弟、ロスインゴと諏訪魔の顔合わせというのも、ちょっと心が躍るものがある。
まあ、誰が負けることになるのか、今からはっきり見える気がするカードがあるのも、また事実ではあるが……
そんなこと言ったら、プロレス界にはそんなカードが目白押しじゃないかと言い返されるのがオチだろう。
あとは、SANADA・辻陽太絡みのカードがどうなるのか、あと数日待つのもまたオツなものだ。
5月24日、初代タイガーマスク(佐山聡。65歳)が会見を開き、同席した元K-1の3階級制覇王者・武尊(たける。31歳)が「7代目タイガーマスク」を襲名することが発表された。
すわ武尊がプロレス転向か、と色めき立つのがファンとしては当然だが――
これはそういう意味ではなく、
あくまで「養護施設出身者の自立支援を中心とした社会貢献活動」を行うためだそうだ。
さすが「今でも誰でも知ってるタイガーマスク」であり、もうその存在は完全にプロレス界を超えている、というところだろうか。
ところで初代から4代目(今も新日本プロレスで現役)までは、プロレスファンなら誰でも知っているが……
「武尊が7代目? 5代目と6代目っているの?」と思うのが普通のプロレスファンだろう。 私も知らなかったのだが、いちおう書いておくと……
●初代 佐山 聡
●2代目 三沢 光晴
●3代目 金本 浩二
●4代目 (新日本で現役)
●5代目 ミノワマン(2010年に1試合だけ初代タイガーと組んで実戦)
●6代目 藤原 敏男(実戦はせず)
ということらしい。
この、特に6代目は、代数に含めていいのかと思うのだが――
しかし初代タイガーの公式見解がこうであるらしいので、これが正しいのだろう(笑)
どうも、4代目が今も現役であることが影響してか、
それとも「実戦でタイガーマスクを名乗る」のは(よっぽど強くなくては非難轟々となって)敷居が高すぎるためか、
5代目以降は明らかに「イベント」となっているようなので、今回の襲名もその流れ上にあるということだろうか。
それにしても、
タイガーマスクの名がまるで歌舞伎や落語の「名跡(みょうせき)」のように襲名されているというのは、長いプロレスの歴史の中でも唯一である。
かつては佐々木健介が「二代目・長州力」を襲名する――
なんて話もあったらしいが、結局立ち消えた。
それはそうで、
たとえリングネームだろうとプロレスラーたるもの(いや、普通の一般人でも)普通はやはり、自分自身の自分だけの名前で活躍したいものである。
あなたが仮に超大金持ちになったとしてもAmazonの次期CEOになれたとしても、「二代目ジェフ・ベゾス」を襲名したいとは思わないだろう。 そう考えると、今後の八代目・九代目…のタイガーマスクが「社会貢献用」として名跡が繋がれていくというのは、自然な流れなのかもしれない。
もしかしたらそれは遠い将来、「かつてプロレスというものが絶大な人気を誇っていた」ということを(唯一?)示す歴史遺産になっているかもしれない……
5月24日、DDTの赤井沙希(36歳)が社長の高木三四郎と共に記者会見を開き、11月12日のDDT両国大会をもって引退することを発表した。
「長く続ける美学もあるけど、私は美しく散る花でいたい」
とのことだが、
女子プロレスラーとして10年はむしろ「非常に長い」現役生活だった、と言うべきだろう。
なにせ、あの細い体をずっと維持して10年間である。
これは、ただの36歳の女性としても稀有なことだ。
この
「あんまりにも体が細いんじゃないか」と感じる女子レスラーの双璧と言えば、赤井沙希かスターダムの鹿島沙希が双璧だろう。
(奇しくも、全く同じ名前)
今でさえこの2人を見て――赤井沙希なんて10年も経っているのに――「この細すぎる体でプロレスができるのか」と感じる人は少なくないと思うのだ。
そして赤井沙希は、「父が赤井英和」という枕詞は今でも確かにつくものの、親の七光りレスラーではなかった。
シングルプレイヤーとしてはも堂々たる一選手であり、
タッグとしては同じ芸能界出身の荒井優希との「令和のAA砲」、メイ・サン・ミッシェル(駿河メイ)との「(NEO)美威獅鬼軍」が特に印象深い。
赤井沙希はこの10年間で、すっかり女子プロレス界を代表する女子プロレスラーの一人となったのである。
いったいこの人がデビューしたとき、誰が10年もプロレスを続けるなんて思っただろうか。
とはいえ個人的には、確かにこの人に40歳を過ぎてもプロレスを続けてほしいとは思わなかったのも事実である。
こう言ってはカドが立つが……
世の中には、40過ぎてもプロレスをやってほしい女子レスラーとそうでない女子レスラーというのが、いるのではないか。
その意味では今回の赤井沙希の引退表明は、本人の言うとおり理想的な引き際だと思う。 とはいえ、まだ引退まで半年ある。
これまた個人的には、あの愛川ゆず季(この人の現役期間は「たった」3年だったのだ)と同じくらいの、盛大な送り出しをしてもらいたいものである。
木村花が2020年5月に自殺して亡くなってから、もう3年経つ。
ところがこの事件、今でも余燼が収まらない。
まず、
なんと「木村花は実は(友人だった)アジャコングに殺されたのだ」という誹謗中傷デマツイートをした人がいて、アジャはこの5月23日に弁護士を通じた法的措置を取ったことをツイートした。
(⇒ スポニチアネックス 2023年5月23日記事:アジャコング、デマ投稿に法的措置 木村花さん命日直前に許せない投稿「冗談じゃ済まないから」) いやはや、奇想天外というかアホらし屋の鐘が鳴るというか、よくもまぁこんなこと考えつく人がいるものである。
よく「想像力の勝利」と言うが、こんなこと考えついてツイートするだなんて、色んな意味で「想像力の敗北」だろう。
この件についてはこれ以上論評にも言及にも値しないと思うので、これで終わる。 もう一つの方は、これよりは論ずる価値があるだろう。
大人気アニメの『推しの子』第6話「エゴサーチ」において、
●主人公が恋愛リアリティ番組に出演する
●その番組の中で登場人物の一人である女子高生が視聴者からの誹謗中傷を受け、自殺未遂する
●その女子高生に視聴者が浴びせた言葉というのが、現実に木村花が浴びせられた言葉そのまんま
だったというのである。
これに対して木村花の母親は、
「これらの言葉は、自分たちが木村花事件についての取材などで公にしてきたもの。
まるで花の死がフリー素材のように扱われていているのは、看過できない」
として、近くアニメ制作サイドにコンタクトを取るつもりだという。
(⇒ 週刊女性PRIME 2023年5月23日記事:《独占告白》人気アニメ『【推しの子】』がテラスハウス事件酷似で波紋 3年目命日・木村花さん母・響子さんが吐露した怒りの抗議「娘の死をフリー素材みたいに扱わないで」) 私は『推しの子』の漫画もアニメも見ていないし、見る予定もないので、この報道だけを読んで書くが……
なんでもこの「恋愛リアリティ番組に出演した登場人物が自殺未遂する」というエピソードは、アニメオリジナルでなく原作漫画にもあったそうで、その雑誌掲載日は木村花事件の半年後だったそうである。
そうだとすると、この原作者というのもなかなかのもんだと思うのは私だけではないだろう。
その掲載当時はSNSでやや話題になったらしいが、それで騒ぎにならなかったのが不思議なくらいだ。 もっとも、これには難しいところがある。
現実に起きた事件をモチーフにして(いや、ほとんどそのまんまにトレースして)小説・映画・漫画などを創作する――
というのは、珍しいどころか創作の常道と言っていいくらいありふれたことだからである。
それがけしからんと言われれば、これから作られる創作物・今まで作られてきた創作物(その中には「永遠の名作」さえあるだろう)は、実に困ってしまうのだ。 ただ、この現代という時代において、アニメ制作スタッフたちが
「これはまずいのではないか、倫理にもとる(と受け取られる)のではないか」
と思わなかったのだとしたら、それはそれで確かに問題だと思う。
私だったら、たとえば「推しの子 木村花」というワードでネット検索し、どのような結果が出てくるかサーチするくらいはするだろう。
あるいは、
「原作でも同じエピソードがあったけど、世間で全然問題にならなかったから今回も問題じゃないだろう」ということだったのだろうか。 いくらなんでも木村花事件というのがあったこと自体をスタッフ誰も知らなかったというのは、非現実的なまでに情報音痴というものだ。
いや、善意に解するとするならば……
アニメ制作スタッフは、まさに木村花事件そのまんまをアニメに再現することにより、世に問題提起するつもりだったのかもしれない。
(これは、あり得ることだと思う。) しかしやっぱり私だったら、それは極めて危険な蛮勇であると判断すると思う。
それにしても、3年経ってもまたこれらの「事件」が起こるのだから――
やはり木村花事件というのは、プロレス界はもとより世間一般でものすごく重要な事件だったのだと改めて感じる。
ある意味あの事件は、21世紀の日本社会のターニングポイントだったのかもしれない。