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極悪レフェリー・阿部四郎氏死去 失われた文明を夢に求めて

 かつて全日本女子プロレスで「極悪レフェリー」として非常に有名だった阿部四郎氏が、4月25日午前、肺炎のため死去した。享年76歳。

(このことは、なぜかZERO-1が発表している。なぜだろう。)

 女子プロレスが第二極盛期(第一期はビューティペア、第三期は対抗戦時代)にあった「クラッシュギャルズ VS 極悪同盟」の時代、レフェリー・阿部氏は疑いなく「名物男」だった。

 あのテレビ中継の(女子観客の声で)凄まじいまでの騒々しさの中、クラッシュギャルズが相手をフォールすればゆっくりとカウントを叩き、その逆だったら高速カウントをかます。

 今でこそ面白試合を演出するのに多用される演出だが、当時の若い女子観客は「本気で悪い奴」と怒っていた(のだろう)と思うと、まさに隔世の感がある。

 阿部レフェリーは団体から減給・出場停止処分を喰らったこともあるそうだが、今ならそれが団体としての「演出」だったことを疑う人はいまい。

 かつてプロレスは、本当に勝敗を争っているのだと思われていた。

 むろん世間の多数派はそれを八百長と受け止めていたはずだが、しかしそうでないと思っていた人(信じようとしていた人)の割合は、現代の数倍・数十倍にも及ぶだろう。
 
 以前の記事でも書いたことだが、「プロレス会場で観客の女子が金切り声を上げて大騒ぎする」あの光景は、今は絶えて見られない「絶滅した光景」である。

(⇒ 2016年4月29日記事:女子プロレスに女子観客は戻るか? 失われた文明の復活)


 今ではそんなことが普通だったなんて信じられないようだが、しかし確かに――しかもごく近過去に、それは確かに実在した。

 「失われた文明」に触れたいならば、何もアトランティスの探求に乗り出すには及ばない。ただサムライTVの「全女クラシックス」の80年代半ばの回を見ればよい――

 そして阿部四郎レフェリーは、言ってみればアトランティスにあったという超金属オリハルコンのようなものだろうか?(アトランティス大陸とくればオリハルコンの名も連想するという意味で)


 阿部四郎レフェリーはまぎれもなく、女子プロレス第二極盛期を代表する人物の一人だった。

 1980年代に地上波テレビで全女中継を見ていた人にとって、そして今でもプロレスを見ている人にとって、彼の訃報は(それはもちろん、いつか来ることだとはわかっているのだが)多くの記憶を――

 あの、今となっては夢のような記憶を思い起こさせるものになっただろう。

 果たして女子プロレスに第四極盛期というものが来るのか、世の中何が起こるかわからないとはいえ、はなただ可能性は少なそうだが――

 しかし、ファンの記憶は永遠である。
 
 阿部四郎さん、ありがとうございました。

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新日本ヤングライオンの凄まじさ/棚橋弘至久々のメイン締め

 4月23日後楽園ホール大会では、新日本プロレスのヤングライオン陣4人が勢揃いするタッグマッチ――

 「川人拓来&岡倫之 vs 北村克哉&海野翔太」が第1試合に組まれた。

 これを見た人は、とてもヤングライオン(要するに新米、グリーンボーイ)同士の試合とは思えないという感想を抱いたに違いない。

 特に北村克哉のあの肉体は、ゼウスやボディガーと同じタイプと言えばそうだが――

 にも関わらず初めて見る人に、関本大介の体型を上回るインパクトを与えるものだろう。


 彼と岡倫之は、全日本(アマチュア)レスリングチャンピオンでもある。

 海野翔太はこの中でも一番若く、まだデビュー3戦目に過ぎないが、新日本で(かつてはWARで)レフェリーを務めるレッドシューズ海野の実の息子である。

(ただし、レッドシューズは「うんの」だが、翔太は「うみの」と読む/読ませている。

 やはり親の影響をイメージさせるのを新日本も嫌っているのだろう。)  

 思うに海野は宿命的なハンディキャップを負っている。どうしても「親のコネ」という言葉が万人の頭の中をちらつくからである。

 これを払拭するには人一倍恭謙でなくてはならないと同時に、試合でも人一倍インパクトを残す努力が必要になる。


 そしてそれは4月23日の試合では、実現できたように感じる。(ドロップキックは上手い。)

 さてそうなると、かえって注目が集まるのは川人拓来だ。

 この4人の中で一番先輩なのにもかかわらず、彼には格闘技のバックボーンも、他にこれといった注目点もない。

 身長・体型もごく“普通”であるし、最もグリーンボーイらしくヤングライオンらしく見える。

 こういう「凄すぎる後輩を持つ、何もない先輩」というシチュエーションは、どうしたってファンの応援心をくすぐるものである。


 おそらくほんの数年後、彼が岡や北村とシングルで戦って勝利することに、説得力を感じる人は少ないだろう。

 しかしそれだからこそ、ファンは川人を応援したくなるものだ。

 川人がこれからどんな戦いを見せるのか、注目したい。

(個人的には、NOAHの清宮海斗と良きライバルになりそうな気もする。) 


 さて23日のメインイベントは「棚橋弘至&ジュース・ロビンソン vs 内藤哲也&EVIL」のタッグマッチで、棚橋組が勝利。

 この試合、「危険すぎる技」を使わないで会場を盛り上げた、素晴らしい試合だったと思う。

 そう、まるで、先日のオカダvs柴田勝頼をはじめとする“新日本ビッグマッチにおける四天王プロレス”へのアンチテーゼのような試合に思えたのだ。


 そして最近、落日に入って久しい棚橋にとっては、実に久々のマイク&エアギターのメイン締めとなった。

 観客もまた、「古き良き時代の新日本の締め」を待ち望んでいたかのように、大いに沸いていた。

 棚橋が徐々に後景に退いていくのは、もう世の習いというか必然的なことである。

 それはまた新日本にとって、健全な新陳代謝というものにも違いない。

 だがやはりファンにとっては、もう少し棚橋に新日本の中心(近く)にいてほしい――

 40代になった棚橋に、もう一花咲かせてほしい/持たせてほしい、と思うのが人情だ。

 おそらく棚橋は、4月29日レスリング豊の国(大分・別府大会)スペシャルシングルマッチでEVILに勝つのではないか……

 さすがにそれを皮切りに、もう一浮上するのではないか。


 これが願望混じりの、試合結果予測である。

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新日本「狂人キャラの系譜」とファレのグラネード廃止論

 サムライTVでは、4月22日と23日の新日本・後楽園ホール大会を2日連続生中継した。

 見て感じたことを短く書く。


1 高橋ヒロムの狂人キャラ化-新日本「狂人キャラ」の系譜

 22日の高橋ヒロムは、自分と(次期IWGPジュニアヘビー王座挑戦者)リコシェの名をそれぞれローマ字で書いた2体の人形を持って入場してきた。

 次の日23日の試合前バックステージインタビュー(清野茂樹アナとミラノコレクションAT氏による)では、人形の文字はカタカナに変わり、高橋ヒロムは床にかがみ込んで猫のマネをして人形で遊んでいた。

(人形を舐め回すまでには至らなかったのは、まだしもというべきか――)


 以前から「ベルトと話をする」奇行で注目を集めていた彼だが、なんだか一線を越えてしまったような狂人キャラ化ぶりである。

 これで高橋ヒロムも、飯塚高史、ヒデオ・サイトーといった2010年代の新日本「狂人キャラの系譜」に連なったわけだ。

 しかしなぜ近年の新日本に限って、こういうキャラが輩出されるのだろうか。

 こういうキャラは大日本やDDTやフリーダムズでこそ続々発生しそうなものだが、意外とそうでもない。

 日本で最大のプロレス団体において狂人キャラの系譜が途切れなく続いているというのは、プロレス界七不思議の一つ――

 とまでは言えないが、地味に不思議なことである。


2 バッドラック・ファレの新必殺技はツームストンドライバーになった

 22日の大会ではツームストンドライバーでオカダ・カズチカをKO、翌23日には同じ技でYOSHI-HASHIをKO。

 次期IWGPヘビー王座挑戦者バッドラック・ファレの新必殺技がツームストンドライバーになったことを、見る人に印象づける結果となった。

 私はこれ、いいことだと思っている。(ただ、いささか落とし方がそっと優しいように見えるのは問題だと思うが……)

 なぜなら従来のフィニッシュホールド――

 バッドラックフォールはいいとして、グラネードの方は近年稀に見る説得力のない技だと思うからである。

 グラネードは相手の喉(顎)を片手で掴んで体を持ち上げ、手を離して落ちる相手の喉笛をもう片方の手の親指で突く技である。

 しかしながら見る人誰でも感じるように、受ける方の相手が自ら進んでピョンと飛んでいることは目に明らかだ。

 そして、本当に親指が喉笛に当たっているかも実に怪しい。 
 
 なぜこれをファレと新日本が決め技として選び、使っているのか、理解に苦しむレベルと言って過言ではない。


(と、みなさん思いませんか?)

 せっかく“デカい選手がやると破壊力倍増”のツームストンドライバーを観客に認知させたのだから、これからはバッドラックフォールとの二本立てで行くことにし、グラネードは廃止した方がいいのではないか。

 仮に5月3日のレスリングどんたくでファレがオカダを破り王座戴冠になるにしても、その決め技がグラネードだというのでは、見ている側も納得できまい。

 「プロレス技は相手の協力がなければできない」というのは一般世間の“常識”なのだが、いかにそんな常識に反発する熱心・強固なプロレスファンでも、グラネードを例に出されては沈黙せざるを得ないだろうから……

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柴田勝頼の硬膜下血腫、四天王プロレス化する新日本?

 新日本4月9日・両国国技館大会(SAKURA GENESIS)のメインイベント後、王者オカダ・カズチカに敗れた柴田勝頼は、花道からバックステージに姿を消すや控え室にも行くことができず倒れ込み、救急車で緊急搬送された。

 そして翌10日、柴田は硬膜下血腫と判明し5時間に及ぶ手術を受けたことが新日本から発表された。

 幸い術後の経過は良好らしいが、これは「良かった良かった」では済まされない大事(おおごと)である。


 ここ最近の新日本の試合が、危険極まる技の掛け合いの代名詞である(そして新日本のライバル・旧全日本の到達点である)「四天王プロレス」に接近しているのではないか――

 という記事を、このブログでも複数書いている。

(⇒ 2017年1月4日記事:新日本2017.1.4東京ドーム オカダとケニーの四天王プロレス?)

(⇒ 2017年2月12日記事:新日本「新しいプロレスの教科書」、世志琥MMA初陣勝利)


 近年の新日本は脱猪木・脱闘魂を果たし、ポップ化した――

 それゆえに新しいファン層を獲得し隆盛を取り戻した、とはあらゆるメディアで書かれている。

 しかし不穏当なことを言うようだが、アントニオ猪木が現役のときの「闘魂プロレス」より、最近の新日本の試合の方がはるかに危険度の高い試合をしている、と感じるのは錯覚だろうか?

 現代の新日本が、かつての馬場全日本の「四天王プロレス」「明るく・楽しく・激しいプロレス」に“回帰”しているように見えるのは、それ自体かなり興味深い。

 それは結局、ファンに楽しまれるプロレスとはそういう形に収斂するものだ、ということを示しているのかもしれない。


 とはいえ今の新日本は、選手層が厚く――それどころか余っているほどだという利点を、さほど生かしているとは思えない。

 大日本プロレスの中核選手である関本大介が1ヶ月間の全休を取ったことは記憶に新しいが、新日本でこそそういうことがずっと簡単にやれると思うのは浅はかなのだろうか?

 
 プロレスの人気とは一般会社の評判と同じく、しぼむときは爆縮するものである。

 もし柴田が植物人間にでもなっていれば、プロレス界の受けるダメージは極めて大きいものとなっていた。

(とはいえ他のことと同じく、何があってもすぐ忘れられ今まで通りの毎日が続く、というのもまた真ではある。)


 我々は今、タバコというものが世の中から指弾・糾弾される雰囲気にあることを知っている。

 幸か不幸かプロレスは、一般の世の中からやや隔絶した面がある。

(みんなが「キ●ガイ」を合唱しそれがテレビ中継される世界は、今の日本ではプロレス界ただ一つだろう。)


 しかしプロレスというものは常に、「あんな危険なことをやって金を集めているなんて、それで死んでも自業自得じゃないか。そんなのに血税を投じた救急車を使っていいのか」と世間様に非難される可能性を秘めている。

 「プロレスを禁止しろという世論が高まる近未来」というのは、決して絵空事ではない。

 「自分が好きで傷つくのは勝手だが、それで税金を使うのは許せない」という心性は、今の日本の雰囲気では相当説得力があり支持を集めると見るべきである。


 新日本の所属選手にローテーションで1ヶ月程度(強制的に・そして補償を払って)休みを取らせるということは、果たして考慮に値しない甘ちゃんの意見だろうか。

 新日本ともあろう日本最大手のプロレス団体に、せめてそれくらいの休暇制度があってもいいと私などは思うのだが……

(そんな福利厚生制度があれば、外国人選手もますます新日本に集まってくるような気もするし。)

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櫻井康雄(原康史)氏、プロレス史の生き証人死去

 4月10日、櫻井康雄氏が死去した。享年80歳。

 櫻井氏は元東京スポーツ新聞社取締役編集局長、そして何より“金曜夜8時”時代の「ワールドプロレスリング」解説者を長年務めたことで有名である。

 もう一つ印象深いのは、そういう要職にありながら“原康史”のペンネームで『激録・力道山』『激録・馬場と猪木』なるプロレス本を何冊も出しているほか――

 『激録・日本大戦争』という39巻もの歴史本シリーズを(新聞連載して)出版していることだろう。

 東京スポーツの部長・局長と言えばそれだけで相当忙しいと思うのだが、この筆力は並大抵のものではない。

 よくそんな時間を作り、よくそんなに書けたものだと感服する。

 ちなみに『激録・日本大戦争』は古本屋で(さすがに全巻揃いではないが)ちょくちょく見かけることがあり、それも高い確率で1冊100円~108円程度で売っているので、見かけたら買っておくことをお勧めする。

(私もバラバラで買ってはいるのだが、残念ながら積ん読状態だ。)

 金曜夜8時の象徴の一人であった櫻井氏の死去は、旧全日本ファンにとっての竹内宏介氏(1946-2012。元日本スポーツ出版社代表取締役社長、全日本プロレス中継解説者、週刊ゴング編集長)の死去と同等の寂しさを感じるものだろう。

 年齢的には「若すぎる死」とは言えないものの、もっと『Gスピリッツ』などの雑誌で昔のことを語ってほしかった。

 そして、口述筆記の形でも回想録のようなものを残してほしかった。

 プロレス史の生き証人の逝去に、謹んで御冥福をお祈りします。

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Appendix

プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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