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DDT、サイバーエージェント傘下になる-これは21世紀のメガネスーパーなのか?

 この9月下旬、日本のプロレス界で大きな動きが2つあった。

 一つは、DDTがその全株式を譲渡し(株)サイバーエージェントの子会社になったこと。(9月22日発表)

 もう一つは、アントニオ猪木と決別したIGFが、中国において「東方英雄伝」という新ブランドを立ち上げたことである。(9月20日発表)

 このうち後者の方は「大きい動き」なのかと疑問符を付す人も多いだろう。

 正直私もこの件については先行き五里霧中なので――当のIGFさえ実際はそうなのではないかと思うが――、現時点では語ることを差し控える。


 しかし前者の方は、確かに虚を突かれる出来事である。

 これで、日本最大のプロレス団体である新日本プロレスが“現代のメンコ屋”ブシロードの傘下になったことに続き――

 今度はDDTが、(少なくとも若年層には)会社自体の知名度が大きいIT企業・サイバーエージェントという大物企業の傘下になったことになる。

 ブシロードもサイバーエージェントももはやプロレス団体のスポンサーではなくオーナーなのだが、しかしあえてスポンサーとしてみた場合、DDTは力道山時代の三菱電機などを除き、日本プロレス史上最大のスポンサーをバックに得たことになる。

 ここでちょっと、今現在のブシロードとサイバーエージェントの企業規模を比較してみよう。

(ネットでちょっと調べただけなのは、ご了承願いたい。)



【(株)ブシロード】

資本金 9億3,000万円(2017年9月)

ブシロード単体売上高 149億55百万円(2016年7月)

連結売上高 223億77百万円(2016年7月)



【(株)サイバーエージェント】

資本金 72億300万円(2017年9月)
  
連結売上高 895億円(2017年9月)

連結営業利益 118億円(2017年9月)




 と、このとおり、グループ会社を連結した売上高では895億と224億で、サイバーエージェント(長いので、以下「サイエー社」と呼ぶ)が4倍も上回る。

 しかもサイエー社はabemaTVという有力なインターネット放送局を持ち、ついでに言えば「サイバーエージェント」という単語をGoogleに入力すると「顔採用」という候補が出てくるほど、女子社員が美人ぞろいだともっぱらの評判である。

(たぶん彼女たちは、年収400万円台以下の男など鼻も引っかけないと思われる……というのは偏見だろうか?)


 これはもう、日本プロレス界にとっては「激震」であり「黒船」であるべきだ。

 しかも会社自体にネームバリューのある、日本で最先端を行くエリート企業の一つというイメージのあるサイエー社が買収に応じたのだから、それこそプロレスに興味のない人もDDTプロレスリングに振り向かせることができるというものだ。

 DDTのプロレスには買収するだけの価値があると、サイエー社は判断したということだからだ。

 これって、全日本プロレスやNOAHなどには、ものすごく羨ましいことではないだろうか。

 今の日本のほとんどのプロレス団体は、できることならこんな風に有名大企業・大資本に買収してもらいたいと願っているのではないか。


 しかし、さっきこの件のことを「黒船」と書いたが――

 古参のプロレスファンがもちろん思い出すのは、あのメガネスーパーが「SWS」という天龍源一郎を擁するプロレス団体を立ち上げたことがある、という故事である。

 なんと“メガネ屋”がプロレス団体を持つなどというSFみたいなことが、かつてこの日本では実際にあったのである。


(⇒ 2015年11月16日記事:天龍引退余話:リングに「メガネスーパー」の名!)


 あのときSWSが、ターザン山本が編集長である『週刊プロレス』に、さんざん「金権プロレス」「企業プロレス」などとバッシングされたことは極めて名高い。

 しかし今から振り返ってみれば、SWSは「時代を先取りしすぎた悲劇」の典型例のようなものだ。

 今DDTがサイエー社の傘下になったからと言って、そのこと自体を金権だのなんだのと叩いたり拒絶反応を示すプロレスファンはほぼいないだろう。

 むしろこれは間違いなく「明るいニュース」(もしくは「スゴいニュース」)として受け止めるのが当たり前なのだから、時代はやっぱり変わるのである。



 ところでSWSがわずか3年も持たずに崩壊した真因は、「親会社から出る莫大なカネを当てに、選手たちが少しでも多く甘い汁を吸おうとした」ことだと言われている。

 だがこの点についてもやはり時代は違うのであり、DDTがジャブジャブのカネ漬けの中で分裂・崩壊するようなことはないように思える。

 サイエー社を率いる藤田晋社長が熱心なプロレスファンとは聞かないし、今回の買収はあくまでビジネス上の冷徹な判断だろう。

 社長自身やその息子がプロレスファンだったメガネスーパーとは違い、カネをジャブジャブつぎ込むどころか、DDTにはとにかく収益への貢献を求めてくるに違いない。


 だから収益に貢献しない選手は、今まで以上に厳しい環境に置かれるだろう。

 そしてDDTの全株式を握っているということは、いつだってDDTを廃業することもできるのだ。

(むろんそうなったとしても、旧DDTの選手らは新たな団体を立ち上げるに決まっているが……)


 おそらくDDTは、abemaTVの有力コンテンツになることを見込まれ・期待されている。

 プロレスファンは他の何かのファンに比べてもハマり込む率が高いように思われるので、DDTの特別オリジナル番組などを流すなどして有料固定客を増やすこともかなり有望と思われる。


 はたして、史上最大級のスポンサー(オーナー)を得たDDTが、これからどうなっていくのか――

 かつて猪木・新日本と馬場・全日本の対立は、テレビ朝日と日本テレビという二大テレビ局の代理戦争とも捉えられたものだが……

 21世紀の今は、有力コンテンツ企業同士の代理競争の様相を呈してきたとも言える。


 やはり時代は、どうでもこうでも変わるのである。 

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sareeeのシードリング8ヶ月退団と古巣・ディアナ復帰

 9月15日、高橋奈七永のシードリングは、所属選手のsareee(サリー。21歳)が退団することを発表した。

 奈七永のコメントは「このような発表になり寂しく思いますし、ファンの方にはお騒がせして申し訳ありません。何度も話し合い、最後は本人の意思を尊重した結果です。私たちは残ったメンバーで頑張っていきます」というものであった。

 そして9月18日のシードリング新宿FACE大会でsareeeはリング上から観客に挨拶し、退団後は何と古巣のディアナに戻ることを発表した。

 9月19日の彼女のブログでは、このことについて次のように書かれている。

*******************************************

ありがとうございました。

2017-09-19 21:35:37


昨日はSEAdLINNNG新宿大会に
ご来場いただき誠にありがとうございました。

皆様にご報告させていただいた通り
私、Sareeeは10月18日後楽園ホール大会でSEAdLINNNGを退団します。

そして、生まれ育ったワールド女子プロレスディアナに戻ることを発表させていただきました。

この半年間でSEAdLINNNGの方には
本当にたくさんの刺激をもらいました。 
プロレスラーSareeeを見つめ直すことがでました。
自分の居るべき場所、やるべきこと、あるべき姿に改めて気づきました。
自分の中にある信念を絶対に何があっても曲げたくなかったし変えたくなかった。
それを思えば思うほど、考えれば考えるほど、自分の中にディアナ魂があってディアナ愛があって、自分の気持ちに嘘をつけなかった。


いつも応援してくださるファンの皆様、
本当に本当にありがとうございます。
温かいお言葉を本当にありがとうございます。

女子プロレス界の頂点にいけるように
今まで以上に気を引き締めて、
一生懸命頑張っていきます。

言葉というよりも、闘うことでしか自分の生き様を伝えることができないのでこれからもリングの上でのSareeeを見ていてください。

*******************************************

 本ブログでは今年2月2日に、次の記事を書いている。

(⇒ 2017年2月2日記事:sareee・中島安里紗のシードリング入団-「わが陣容がさらに強化されたぞ」)


 ディアナでのラストマッチは2月26日、シードリングでのラストマッチは10月18日になる。

 結局彼女は8ヶ月で転職先を辞め、元いた職場に復帰することになる。

 これは一般世間ではおろか、色んな格闘技のジムでも道場でもまずあり得ないことだろう。


 むろんディアナにとってはありがたいことには違いない(そして選手の平均年令もグッと下がる)が――

 これはディアナの社長兼エースの井上京子ら選手陣には、嬉しいことなのか背に腹は代えられないということなのか?

 端から見れば、ディアナよりはシードリングの方がまだしも将来性があるように見える。

 ディアナは“四十歳以上の選手”だけが争う「WWWD世界エリザベス選手権」を中心に据えているほど高年齢の選手層であり(逆手にとって活用している、とも言えなくもないが)――

 シードリングにはサムライTVの中継も一応ある(最近はやってないが……)からだ。

 しかしこれはまさに端から見ることで、中の人たちにとってはまた別の感想や内実があるのは当然である。


 とはいえこの一件、どうしても潮崎豪がNOAHを辞めて全日本に行き、またぞろNOAHに戻ってきたことを思い出させずにいられない。

(⇒ 2015年11月13日記事:潮崎豪のリターン・トゥ・ノア)

 だがsareeeの場合はこれと同じことをわずか8ヶ月でやってしまうのだから、古臭い言い方だがまさに“現代っ娘”といったところだろうか……

 私もsareeeのディアナへの帰属意識が強そうなことは感じていた(だからディアナ退団&シードリング入団は驚きだった)が、それがこれほどのものであり、ディアナもまたそれに応えるほどのものだとは思わなかった。

 それにしても、「思えば思うほど、考えれば考えるほど、自分の中にディアナ魂があってディアナ愛があって、自分の気持ちに嘘をつけなかった」と言われてしまったら、シードリングの選手陣も困ってしまう(というか怒りを感じる)だろう。

 だったら最初からディアナを辞めるな、と誰でも思うところだが――

 そこはそれ、人にも環境にも千差万別・多種多様な事情があるというものだ。


 ともあれ、だいたいは順調に?進んできた高橋奈七永のシードリングも、ここで初めて目に見えるような挫折を迎えることになった。

 奈七永、世志琥、中島安里紗らがここからどんな仕掛けで巻き返しを図るのか(その有力な一策として、「世志琥のRIZIN出場」があるor本当に目論んでいることは、本ブログでも何度か書いてきた。)、注目したいところである。

「中邑真輔またも王座戴冠ならず」とジンダー・マハルのWWE内幕インタビュー

 9月16日のWWE日本(大阪)公演で、中邑真輔はWWE王者ジンダー・マハルに再度挑戦し、またもマハル部下のシン・ブラザーズの乱入により王座戴冠を逃した。

 私は中邑がいずれ(たとえ短期間にしても)WWE王者になることをあまり疑ってはいないが、WWEも「気を持たせる」ものである。

 しかし、今年8月20日(日本時間8月21日)のWWE「サマースラム」での初挑戦からたった1ヶ月未満での王座戦リターンマッチ、しかもいずれも乱入で敗北という“格を落とさない”負け方をしている点、中邑の評価が日本人としてWWE史上最高であることはほとんど疑いない。

 そして9月12日(日本時間13日)のメイ・ヤング・クラシック・トーナメント(WWEが初開催する女子トーナメント戦)では、あのカイリ・セイン(宝城カイリ)が見事優勝を遂げた。

 決勝戦の相手はシェイナ・ベイズラー。彼女も他の選手も、全てあのダイビング・エルボードロップで仕留めている。

 まさにスターダムの景色そのものであったのだが、しかし宝城カイリがWWEでトリプルHに手を挙げてもらうなんて、たった2~3年前に予言者が予言していたらさんざんバカにされていただろう。

 げに動きの速きはプロレス界、である。



 ところで二度に渡って中邑を退けたWWE王者ジンダー・マハルが今年8月18日に受けたインタビューが、WWE日本版公式サイトに無料公開されている。

(⇒ WWE公式サイト2017年9月15日記事:【モバイル】WWE公式サイト ジンダー・マハル選手 独占インタビュー無料公開)


 その内容は衝撃的と言えば衝撃的で、WWEの試合は結末が決められていること、ただし「試合の途中で“やっぱり変えた。負けてくれ”と言われることもあるということが、非常にアッケラカンと語られている。

 しかしそれでいて、


「中邑との試合は本当に楽しみだ。

 じつは先日、彼の新日本プロレス時代の映像も見てみたんだけど、WWEに来てからの試合とは結構スタイルが違うなと感じたんだ。

 彼が隠し持っている武器として備えておく必要があると思う。

 まあ、動きが素早くて打撃が正確なのは、新日本時代も今も変わらないから、どっちにしろ手強い相手だよ。

 だが、中邑の強い打撃を受ける体は作ってある。全部受けきる覚悟もできてるよ。むしろ逆に、彼のほうが俺を甘く見ている部分はあるんじゃないか?」



 とも並行して語っているのだから、プロレスというのはつくづく奥深いというか――

 一般人ならワケのわからないものだと感じるだろうことは、つくづく思う。


 中邑もカイリ・セインもASUKAもヒデオ・イタミも、プロレスの内幕がこんなに明るく語られることのない日本から離れ、こういう世界で生きているのである。

 若干大袈裟に受け取るとすればこの「無料公開」インタビュー、日本のプロレス(及び日本のプロレスファン)への、WWEからの挑戦・挑発と取れないこともない。


(しかしそれにしても、WWEが公式に公開するインタビューなのだから当然と言えばそれまでだが――

 ジンダー・マハルの好漢ぶり・イイ人ぶりが如実に感じられるインタビューである。)


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アントニオ猪木、訪朝から帰国&10.21生前葬を表明

 参議院議員のアントニオ猪木(74歳)が、32回目の北朝鮮訪問から帰国した。

 そして2000年前後のプロレスファンにとってはお馴染みのものであった、「羽田空港でのインタビュー」を開催した。

(それにしても32回である。朝鮮総連とかの関係者は別として、日本で一番北朝鮮へ行っている人ではないか。

 まさに北朝鮮渡航のプロである。)



 彼が北朝鮮で会った朝鮮労働党の副委員長リ・スヨンとの会談内容はどうでもよくて――

(イ・スヨンは「アメリカや国際社会が我々に圧力をかけ続ける限り、我々はさらに核開発を続けます」と語ったというが、そりゃそう語るだろう。)

 
 プロレスファンにとってそんなことよりはるかに重要なのは、猪木が10月21日に両国国技館で自身の「生前葬」を行う、と発表したことだ。

(⇒ デイリースポーツ2017年9月11日記事:猪木氏 まさかの発言「俺も元気がなくなってきてる」 10・21生前葬開催へ)


 なお、イ・スヨンにも「そこに是非きてくださいよ」と話題を振ったものの、「生前葬の文化が北朝鮮にはなく、あまり理解してもらえなかった」らしい。

 これはクスッと笑うところだろうが、それはそんなこと言われても「そうすか」としか答えようがなかろう。


 きっと猪木は北朝鮮でも、「しばしばヘンな話を振る人」「何て答えればいいかわからないことを言ってくる人」と、若干警戒されてはいるのだろう……


 それはともかく猪木は、「俺もだいぶ元気がなくなってきた」「体も弱って、息切れもきつくなってきた」と気弱な言葉を発している。

 猪木がマスコミに囲まれて空港から歩いて出るシーンも映像で見たが、あれは確かに老人の覚束ない足取りだった。

 もちろん猪木はもう、74歳――

 大日本プロレスのグレート小鹿が75歳で今なお現役レスラー(流血戦すらやっている)であることを思えば「まだまだ」とも思えるが、普通は老衰して当然の年頃である。


 しかし「猪木が生前葬を行う」と聞いたとき、反射的に思い出したのは……

 原田久仁信の漫画単行本『プロレス地獄変』(宝島社)所収の「ゴマシオ百年の孤独」、“故・内外タイムス新聞葬”の一節であった。


20170911ゴマシオ百年の孤独



 老舗夕刊紙・内外タイムスは経営不振に陥り、創刊60周年に当たる2009年の9月2日付けで「リアルスポーツ」に紙名変更した。

 その格闘技部門責任編集者長となったのが、あの“ゴマシオ”こと永島勝司氏である。

 紙名変更前の6月1日、“前代未聞”の“故・内外タイムス新聞葬”が開かれた。

 それにはもちろんアントニオ猪木や、田代まさしらが参加していた。

 あの漫画を読んだ人なら誰でも思うに違いないが――

 ひょっとして猪木は、この新聞葬にインスピレーションを得て(憶えていて)自分の生前葬をやろうと決めたのかもしれない。



 そしてもう一つ、“猪木本”を読んできた人で誰もが思うだろうことは――

 やはり猪木は、生きているうちに「盛大な自分の葬儀」を見たい。

 大勢にのぼるだろう参列者を見て、どんなに自分が主役であるか目立っているかを何度でも確認したい。

 そういう気持ちで動いているんだろうなあ、ということである。

(これが必ずしも悪口でないということは、いささかでも猪木を知っているプロレスファンでなければ到底理解できないだろう。)



 この生前葬、おそらくは前田日明も行くのだろう。(高田延彦は、たぶん行かない。)

 前田も内心では「猪木さんにも困ったもん、でもああいう人」と思いながら参列するのが、ほとんど目に見えるようである。



 果たしてこの生前葬がどのように/どれほどに報道されるものなのか……

 サムライTVは「バトルメン」の中で放送するに違いないが、しかし地上波テレビや新聞紙上でチラリとでも流されることは、あまり期待できない気がする――

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高山善廣「再起不能」の発表-鈴木みのるの涙と高田延彦の名

 9月4日、ついに高山善廣の病状が発表された。

 後楽園ホール展示会場で行われた会見に出席したのは、

 石原 真(高山のマネージャー)

 鈴木 みのる(有志代表)

 高木 三四郎(DDT社長。高山は5月4日のDDT大阪・豊中大会で負傷した)

 の3名。


 高山はICU(集中治療室)からHCU(準集中治療室)に移り、自分で呼吸できはするが、肩から下の感覚が戻っていない。

 結論として病名は頸髄(けいずい)完全損傷で、医師から「現状では、回復の見込みはない」と言われている。

 あの高山本人さえ絶望を口にしていたが、少しでも望みを持ってリハビリを行っているとのこと――


 正直、近年の高山のコンディションは、お世辞にも素晴らしいとは言えないものだった。

 見るからに腹は緩み、それほどトレーニングを行なっていないことは、素人にも明らかにわかるほどだった。

 しかしそれでも意外なのは、彼の大怪我(怪我と言うにはあまりに重大だが)の原因が、例の頭から落とす技を食らったとかエベレストジャーマンを失敗したとかでなく、「自分から回転エビ固めをかけるときに頭から落ちた」というものであることだ。

 まさかそんなことで全身麻痺になってしまうとは、つくづくプロレスとは恐ろしいものである。

 そしてまた、いかに高山の体にダメージが蓄積されていたか、今更ながら慄然たるものがある。



 高山善廣といえば誰もが思い出すのが「トップロープを一またぎ」の入場と、「プロレス界の帝王」という異名である。

 しかし何より有名なのは、あのドン・フライとの伝説的な殴り合いの試合だろう。

 2002年6月23日の総合格闘技大会『PRIDE21』(さいたまスーパーアリーナ)のメインイベント(!)、高山vsドン・フライは、PRIDE史上はおろか世界格闘技史上における一つの金字塔のような扱いを受けている。

 MMA技術なんてクソ喰らえと言わんばかりの拳の大打撃戦で高山の顔は無残に腫れ上がり、フライの軍門に降った。

 しかし、この日の大会の沈滞した雰囲気はこれで一気に吹き飛び、負けた高山は工業の救世主となるとともに一挙に「プロレス界の帝王」と呼ばれるようになった。

(この、負けたのに帝王と呼ばれるというところなど、まさにプロレスラーの真骨頂である。)

 以後高山は、「プロレス界の救世主」と呼ぶのは言い過ぎかもしれないが、それに近い活躍をあらゆるプロレス団体で見せるようになる。

 2000年代前半の日本マット界は、負けたことで大いなる“格”を手に入れた「高山善廣の時代」だったと言っていいほどかもしれない。

 その高山が「半身不随」(これでも非常にどぎつい言葉だが)以上の「全身麻痺」という形でプロレスラー人生にピリオドを打つ(さすがに、もうリング復帰は無理だろう)ことになろうとは、誰が予想しただろうか……

 やはり高山は、三沢光晴の死、小橋建太の引退を経て、自らももう少し早く引退すべきだったと悔やまれてならない。

 しかし「もうちょっと行ける」と思う気持ちは、人間なら誰しもわかる気持ちである。

 せめて首から下の感覚が戻り、車椅子生活だけでもできるようになれば、と願う。


 なお、病状発表会見に有志代表として出席した鈴木みのるは、日頃のキャラを捨てて涙ながらに「力を貸してください」と訴えた。

 そして近年、現役プロレスラーの口から絶えて聞くことのなかった人物の名まで出したという。



「命を懸けて闘った自分の親友です。

 今さらこんな『バカヤロー』って人のことをぶっ飛ばしている、

 こんなクソヤローが何を言っても皆さんに響かないと思いますが、

 俺なんかどうでもいいので、ぜひ高山善廣に、勇気をたくさんもらったと思うので、ぜひ皆さん力を貸してください。

 それと彼は言いませんが、UWFの大先輩の前田日明さん、彼の一番最初の師匠である高田延彦さん、力を貸してください。よろしくお願いします」




 前田日明はともかく、高田延彦――

 これほど「UWF本」が氾濫する昨今の中、元選手陣の中でただ一人、UWFについてのインタビューを一切受けない高田延彦。

 それはまるで、UWFが彼にとっては思い出したくない“黒歴史”であったかのようにさえ感じられる。


 実際、高田に面と向かって「UWF」と口にするのは、テレビ局員やテレビタレントにとっても禁断のタブーなのではないだろうか。

 しかも鈴木みのるは、よりによって前田日明と高田延彦の名を並べて(続けて)涙ながらに口にしている。

 前田と高田の因縁がプロレス界で最もリアルで深刻なもの(だろう)ということは、ちょっと前田のインタビューを読んだことのあるプロレスファンなら、誰でも知っていることだ。


 現役プロレスラー、しかも同じUWFに所属していた鈴木みのるらが、(個別の雑誌インタビューはともかくとして)こういう公の場で映像の残るところで二人の名を並べて出した――

 というのは、よほどの覚悟……というか、やむにやまれぬ心情があったのだと思わずにはいられない。

 
 ただ、果たして前田と高田に力を貸してくださいというのは、具体的にどういうことをして欲しいというのか――

 それはまだ、当の二人の動きを見てみないことにはわからない。



 
 なおDDTでは、高山を支援する「TAKAYAMANIA(タカヤマニア)」を立ち上げ、

●各団体に呼びかけ、各試合会場に募金箱の設置と応援グッズの販売

●高山プロデュースによるプロレス興行などを行う

 ことを併せて発表した。

 その収益は、全て高山の治療費に充てられるという。

(むろん生命維持装置に繋がれての治療には、毎日莫大な費用がかかるはずだ。

 加えて、おそらくプロレスラーなので、生命保険・入院保険にも入れてはいない。) 
 

 高山善廣は、「プロレス界の帝王」というのはもはや言い過ぎにしても、「プロレス界の(暗黒期を支えた)功労者」であったことは疑いない。

 募金の振込先は、次のとおりである。


【銀行振込】

東京三菱UFJ銀行 代々木上原支店

店番号  137

口座番号 普通預金0057767

口座名義 株式会社高山堂 カ)タカヤマドウ 


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Appendix

プロフィール

平 成敏

Author:平 成敏
1970年代生まれの男性。
認定ファシリティマネジャー、主に施設管理の仕事に従事。
プロレス、社会、歴史など、興味関心のある分野についてあまり脈絡にこだわらず書いていきます。(⇒プロレス以外の話題については、別ブログ【社会・ニュース・歴史編】をご覧ください。)

著作一覧(アマゾンkindle版)

ペペチール第三王朝の興亡:表紙 世界系統樹:表紙 尊敬なき社会(上):表紙 尊敬なき社会(下):表紙

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