新日本6.4大阪DOMINIONでは、日本時間
6月26日にカナダ・トロントで行われる新日本-AEW合同興行において、オカダ・カズチカとブライアン・ダニエルソンの対決が実現することが示された。
ブライアン・ダニエルソンと言えば、元WWEである(そして元NOAHである)。
そして、「YES! YES!」男である。
あのYESアピール(及び観客のコール)は、世界のプロレス界を席巻したもの。
そのプロレス界での世界的スーパースターがまたしても新日本に登場し、オカダ・カズチカと対決する。
これは確かにコーフンものである――
が、少し気になるのは、またも「元WWEか」という点である。
ジョン・モクスリー、メルセデス・モネと来て、今度はブライアン・ダニエルソン。
彼らと新日本・スターダムの選手たちとの顔合わせは夢カードには違いないが、一方でそれは「恒例行事」になっている観もあるのではなかろうか。
もっともこれはこれで、ぜひ恒例行事になってほしいと願うファンも多いだろう。
特に「現代怪奇派レスラーの頂点」ブレイ・ワイアットなんて、いったいいつ来てくれるのかと心待ちにしている人も多いかもしれない。
(ザ・ミズもそんな一人だろうか……)
女子レスラーとなるとさらに「待望論」は大きくて、
シャーロット・フレアー、ベッキー・リンチ、アレクサ・ブリスなど、枚挙に暇ないほどだろう。
あるいはこの恒例行事は、かつての馬場全日本の「次はどんな未知のガイジン選手が来るんだろう?」というものの現代版なのかもしれない。
さすがに全くの未知の強豪というのは、今どきいないかもしれないが――しかしニンジャ・マックなどの例もある――、その代わり現代では、「世界的に有名なプロレス大スター」というのがいる。
それはやはり、元WWE選手(しかいない)ということになる。
そして、なんだか逆に――
今ではWWE在籍中の選手たちこそ、もしWWEから離れることになれば次は新日本とさっそく交渉しよう、という慣例文化が生じているような気もするのである。
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6月4日、新日本プロレスは(毎年上半期の決算とも言える)大阪DOMINIONを開催した。
目玉は何と言っても、メインイベントのIWGP世界ヘビー級戦――王者SANADA vs 挑戦者・辻陽太のタイトルマッチであった。
試合結果は、SANADAが勝利して王座防衛。
しかしこれは、誰もが思ったことだろうが……
試合の空気を支配していたのは、どう感じても辻陽太の方である。
何と言っても、あの笑顔が素敵すぎるではないか。 あれは近年まれにみる笑顔であって、「プロレスラーは表情が大事」の定説に従うなら、まさに天の与えた最強クラスの表情とさえ言える。
辻陽太は、決して体の大きい方のレスラーではない。(182センチ・105キロ)
試合序盤に放った場外へのブエノ・デ・アギラ(後方回転アタック)は観客の度肝を抜いたが――
しかしプロレスファンは何十年も前に、あのビッグバン・ベイダーがムーンサルトをやるという凄まじい光景を既に見ていたものである。
にもかかわらず、怪物的な体の分厚さと身体能力そして「雰囲気」を強烈に印象付けたのだから……
今回の試合、辻陽太の大成功というか「圧勝」と称しても良いほどではなかったかと思う。
さて、試合前から怪物性を出すことに成功していた辻陽太のことだから、
今回の試合も「第2次レインメーカーショック」、すなわち辻の勝利・王座戴冠を予想していた人も多かったと思われる。
しかし私は我ながら論拠薄弱だが、SANADA防衛を予想していた。
なぜかと言うに、
「辻陽太」という名前がIWGP世界ヘビー級王者にはちょっと(特に字面が)軽い、と感じたからである。
あなたもたぶん、思うと思うのだが――
もしレインメーカーショック時のオカダ・カズチカが「岡田かずちか」という旧名のままだったら、はたして王座戴冠していただろうか。
だから私の予想では辻陽太は今後、それなりの名前に改名すると思うのである。
「ようた」という読みと「陽」の字は、どうにも「怪物性」とは相性が悪いではないか――
6月1日、NOAHは岡田欣也(30歳)と矢野安崇(26歳)を、両者合意の上で選手契約解除したと突如発表した。
理由は、何も語られていない。
(⇒ 日刊スポーツ 2023年6月1日記事:【ノア】岡田欣也と矢野安崇、両選手合意のもと選手契約を解除) この両選手、NOAHの「期待の若手」だった。
いや、期待の若手と呼ばれない若手というのはいないものだが――
そうであってもこの2人は、大袈裟に言えば……
かつて存亡の危機に直面したNOAHが、ようやく若手も多く入ってきて復興の道が見えてきたということについての、象徴のような存在ではなかったろうか。
(言い過ぎだろうか?)
それがこうやって、何の説明もなしの突然の「解雇」である。
確かに解雇とは書かれていないが、限りなくそれに近いニュアンスを感じないではいられない。
これにはきっと良からぬ事情があったのだろうし、
よりによってプロレス界にとって10年以上ぶりのオールスター戦「ALL TOGETHER」が開催される直前というタイミングでさえあるのだから、よっぽどの事情なのではないか。 それはまぁ確かに、選手を解雇するたびに団体・企業には詳しい説明責任が生じる、という決まりはないだろう。
プロレス団体なら、なおさらかもしれない。
そして確かにこんなことは、プロレスファンならずとも世間の人たちはすぐに忘れるものでもある。
そうは言っても――特にNOAHの場合は昔から際立って――、近年のプロレス団体は、選手の解雇・処分の理由を全く言わなすぎるのではないかと思わぬではない。
これでは岡田欣也・矢野安崇の両選手がこのまま引退するのかどうかも、一切手掛かりがないままである。
もちろん両選手が他の団体またはフリーで復帰するというのなら、いつの日か今回の契約解除の真相が、本人の口から語られる日も来るだろうが……
5月31日、6月9日に両国国技館で開催される「ALL TOGETHER AGAIN 元気があれば何でもできる!」のカードがほぼ全て発表された。
あとは新日本で直前に行われる「SANADA vs 辻陽太」のIWGP世界ヘビー級の結果待ちというところだろうか。
なお、「ALL TOGETHER」オールスター戦は第3回目であるので、私個人は「ALL TOGETHER 3」と心の中で呼んでいる。
(⇒ 日刊スポーツ 2023年5月31日記事:国内メジャー3団体による「ALL TOGETHER AGAIN」対戦カードを発表) 重複を厭わず、対戦カードを挙げてみると……
●AMAKUSA、青柳亮生、高橋ヒロム VS HAYATA、ライジングHAYATO、マスター・ワト
●フランシスコ・アキラ、TJP、アーロン・ヘナーレ、グレート-O-カーン、ジェフ・コブ VS 田村男児、佐藤光留、本田竜輝、斉藤レイ、斉藤ジュン
●成田蓮、エル・デスペラード、鈴木みのる VS 宮脇純太、杉浦貴、丸藤正道
●大森北斗、石川修司 VS 中嶋勝彦、潮崎豪
●海野翔太 VS ヨシ・タツ
●藤田晃生、ザック・セイバーJr. VS ショーン・レガシー、クリス・リッジウェイ
●清宮海斗、宮原健斗、棚橋弘至 VS 拳王、青柳優馬、オカダ・カズチカ
●BUSHI、鷹木信悟、内藤哲也 VS 安斉勇馬、諏訪魔、永田裕志
●YOSHI-HASHI、後藤洋央紀、石井智宏 VS 稲村愛輝、稲葉大樹、マサ北宮 私はこれらのカード群、かなりいいものが揃っているのではないかと思う。
もちろんオールスター戦のカードとなれば「文句百出」になるのはわかりきった話で、プロレスファンの一人一人が何らかの思いを――「ああすれば面白くなるのに」という思いを――持つのが当たり前ではある。
しかし全体的に、楽しみな顔合わせが多く揃っているのではなかろうか。
中でも目立ちまくるのは唯一のシングルマッチである海野翔太とヨシタツ戦で、ただこれだけでも海野翔太がいかに「新日本の星」であるかがわかるというものだ。
その相手がヨシタツだというのも(絶妙とまでは言わないが)なかなかのチョイスで――
ヨシタツが勝つのか負けるのかちょっと読めない、そういうヨシタツのプロレス界での位置づけまでが伝わってくるようではないか。
また、グレート-O-カーンと斎藤兄弟、ロスインゴと諏訪魔の顔合わせというのも、ちょっと心が躍るものがある。
まあ、誰が負けることになるのか、今からはっきり見える気がするカードがあるのも、また事実ではあるが……
そんなこと言ったら、プロレス界にはそんなカードが目白押しじゃないかと言い返されるのがオチだろう。
あとは、SANADA・辻陽太絡みのカードがどうなるのか、あと数日待つのもまたオツなものだ。
5月24日、初代タイガーマスク(佐山聡。65歳)が会見を開き、同席した元K-1の3階級制覇王者・武尊(たける。31歳)が「7代目タイガーマスク」を襲名することが発表された。
すわ武尊がプロレス転向か、と色めき立つのがファンとしては当然だが――
これはそういう意味ではなく、
あくまで「養護施設出身者の自立支援を中心とした社会貢献活動」を行うためだそうだ。
さすが「今でも誰でも知ってるタイガーマスク」であり、もうその存在は完全にプロレス界を超えている、というところだろうか。
ところで初代から4代目(今も新日本プロレスで現役)までは、プロレスファンなら誰でも知っているが……
「武尊が7代目? 5代目と6代目っているの?」と思うのが普通のプロレスファンだろう。 私も知らなかったのだが、いちおう書いておくと……
●初代 佐山 聡
●2代目 三沢 光晴
●3代目 金本 浩二
●4代目 (新日本で現役)
●5代目 ミノワマン(2010年に1試合だけ初代タイガーと組んで実戦)
●6代目 藤原 敏男(実戦はせず)
ということらしい。
この、特に6代目は、代数に含めていいのかと思うのだが――
しかし初代タイガーの公式見解がこうであるらしいので、これが正しいのだろう(笑)
どうも、4代目が今も現役であることが影響してか、
それとも「実戦でタイガーマスクを名乗る」のは(よっぽど強くなくては非難轟々となって)敷居が高すぎるためか、
5代目以降は明らかに「イベント」となっているようなので、今回の襲名もその流れ上にあるということだろうか。
それにしても、
タイガーマスクの名がまるで歌舞伎や落語の「名跡(みょうせき)」のように襲名されているというのは、長いプロレスの歴史の中でも唯一である。
かつては佐々木健介が「二代目・長州力」を襲名する――
なんて話もあったらしいが、結局立ち消えた。
それはそうで、
たとえリングネームだろうとプロレスラーたるもの(いや、普通の一般人でも)普通はやはり、自分自身の自分だけの名前で活躍したいものである。
あなたが仮に超大金持ちになったとしてもAmazonの次期CEOになれたとしても、「二代目ジェフ・ベゾス」を襲名したいとは思わないだろう。 そう考えると、今後の八代目・九代目…のタイガーマスクが「社会貢献用」として名跡が繋がれていくというのは、自然な流れなのかもしれない。
もしかしたらそれは遠い将来、「かつてプロレスというものが絶大な人気を誇っていた」ということを(唯一?)示す歴史遺産になっているかもしれない……